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中南米って、どんなところ?中南米に転がるビジネスチャンス探し【初級編】その6:自動車産業その他

中南米

その6: 自動車産業その他
** 自動車産業と、知られていない成長産業 **

今回は、中南米における自動車産業や自動車市場の概要と、あまり知られていない産業についてご紹介します。

 

1.自動車産業

自動車販売

主要製造業として工業の指針ともなる自動車産業ですが、まず気になる自動車販売市場はどのようになっているでしょうか。
2019年のラテンアメリカでの、メーカー・モデル別販売台数ランキングは、以下のようになっています。黄色は日本のメーカーのものです。これはラテンアメリカ全体のものですので、国別では売れ筋モデルは変わってきます。

自動車生産

世界の自動車生産は、第1位が中国、第2位が米国、第3位が日本、第4位がドイツ、第5位がインドで、メキシコが第6位、ブラジルが第8位となっています。南米ではこの他、アルゼンチン、ウルグアイ、コロンビア、エクアドル、ベネズエラにも自動車組み立て工場があります。

自動車産業はすそ野が広いため、メキシコやブラジルでは自動車部品産業も発達しており、特にメキシコは、自動車部品生産は、中国、米国、日本、ドイツに次いで世界第5位となっています。ただメキシコの場合は米国・カナダにかなり依存しており、完成車の86%、自動車部品の90%は、米国・カナダ向けとなっています。また自動車部品の輸入は、米国・カナダからが61%、アジアからが24%となっています。

2020年7月に発効した新しい北米自由貿易協定(USMCA)では、メキシコから無関税で完成車を米国やカナダに輸出する為には、完成車の原産割合を2023年には75%とする必要があります。また原産として認められる為には、平均「時給」が16米ドル以上の地域での労働付加価値割合が2023年までに40%となっていることや、現在北米域外からの輸入が多い鉄鋼やアルミの域内調達率を70%とすることが要請され、現状ではメキシコの自動車産業にとって厳しいものとなっています。ただ、メキシコの現在の最低賃金は「日給」で約9米ドルですが、高い給与を払ってでも、米国に拠点を移すよりはメキシコにとどまる方がメリットがあると判断するメーカーもあるようです。

ブラジルの場合は、自動車部品の大きなアフターマーケットがありますが、中国、インド、トルコからの輸入が多く、国内生産の発展の余地がまだあるとされています。
アルゼンチンでは、2018年からの通貨危機で自動車産業も打撃を受け、2019年上半期の自動車生産は、生産能力の32.2%と過去15年間で最悪のものとなっています。
コロンビアには、GM、Isuzu、Volvo、Chevrolet、Renaultの自動車や日野のトラックが組み立てられていますが、国産部品はわずか15%であり、メキシコに比べて自動車部品製造のすそ野は広がっていません。

 

2.その他の産業

次に、あまり知られていない南米のその他の産業をご紹介します。

先端技術産業

中南米の中では教育水準が高く治安も比較的良いコスタリカで、先端技術産業が発達しているのは、あまり知られていないのではないでしょうか。
NASAの宇宙飛行士で7回宇宙に飛び、惑星間航行用のプラズマエンジンを開発しているAd Astra Rocket社を設立したフランクリン・チャン・ディアスはコスタリカ人で、そのせいもあって、コスタリカでは航空機産業が発達しています。最近では、宇宙ゴミの観測用衛生レーダーがコスタリカに設置されることも、報道されています。
また医療機器の製造と輸出が近年伸びており、2019年の輸出は、対2018年比で、医療機器が3憶7500万米ドル増加、医療針とカテーテルが2億2600万米ドル増加(+27%)、コンタクトレンズが5000万米ドル増加(+73%)と成長しています。
その他ソフトウェア開発などIT関係のコスタリカ企業は、大小含めて113社あり、中南米のシリコンバレー的存在です。
うち37社は、北米や中米、南米、カリブ諸国にも進出して、79ヵ所に拠点を設立しています。

パーソナルケア・化粧品産業

中南米の化粧品やパーソナルケア市場は、世界の14.1%を占めています。2018年の国別比率は、人口に比例しますが、ブラジルが49.1%(145憶米ドル)、メキシコが34.2%(101憶米ドル)、アルゼンチンが8.3%(57憶米ドル)、コロンビアが5%(34億米ドル)となっています。人口一人当たりのパーソナルケア商品の消費が高いのはチリで、年間182米ドル、ウルグアイが170米ドル、ブラジルが153米ドルとなっています。

種類別では、中南米の販売で一番多いのがヘアケア製品で、香水、男性用パーソナルケア製品、スキンケア、化粧品の順で続きます。ブランドとしては、パーソナルケアの Colgate-PalmoliveやUnilever、P&G、L’OREALなどの国際ブランドの他、ラテンアメリカ産のブランドも伸びています。カタログ販売のNatura(ブラジル)、Yanbal(ペルー)、Belcorp(ペルー)などが代表的ですが、資本はブラジル、ペルーであるものの、製品開発や製造は、南米のお洒落の発祥地であるコロンビアを中心に行っています。

 

~コラム~

レディーファーストについて

中南米社会ではレディーファーストが慣習となっていますので、女性の社会進出も進んでいる中、ビジネスの場でも励行すると好感を持たれるのではないのでしょうか。

例えば、ドアの出入りやエレベーターの乗り降りは女性が先ですので、その場に女性がいたら、たとえ秘書やアシスタントなど役職が低い女性でも、さっと譲るのがスマートです。また客先での面談の場では、先に女性が着席するように勧めるか、女性が座ってから座ります。これは日本人男性だけでなく、日本人女性も注意すべきです。なぜなら、日本人女性が日本の習慣で、先に男性が座るのを待っていると、他のラテン系の男性は日本人女性が座るのを待っているので、皆なかなか座れない、という事態が発生するからです。

それから会食の場では、女性が男性にお酒をつぐのはよくありません。そのようなことをするのは娼婦だという感覚があり、女性が気を遣ってラテン系の男性にワインなどをつごうとすると、居心地の悪い空気が流れることにもなります。レストランでの会食であれば、グラスのお酒がなくなったら、ボーイさんを呼んでボーイさんについでもらったほうが良いでしょう。男性同士であれば、お酒をつぎあっても問題はありませんが、高級目のレストランであれば、やはりボーイさんを呼んだ方がスマートです。

<過去の記事リンク>

その1: 地理情報と政権を知る。まずこれだけはおさえておきたい、中南米の地理と政治の基本。
その2: 各国の主な経済指標を知る。各国の経済規模と状態を、少し掘り下げて理解しよう。
その3: 中南米の産業構造。中南米は発展途上の先進国?
その4: 中南米の気候、料理、言語、人種。中南米の国民性を理解する要素をみる。
その5: 中南米諸国の貿易事情。何を輸出して何を輸入しているの?

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